講師とテーマ:

西村 功(東京都市大学教授):長周期地震動に対応した免震構造用積層ゴム支承の座屈安定性

日時:平成31年4月23日
概要:

平成最後の研究会は、積層ゴムの座屈安定性に関する解析と実験による検証、およびその応用例に関するものだった。免震構造に使われる積層ゴムは、大荷重を支えるために扁平な形状となっている。扁平の度合いは2次形状係数で表すことができ、積層ゴムの研究開発から、2次形状係数は5程度にすることが望ましいとされている。

しかし、西村先生の研究では、細高い積層ゴムでも座屈しないようにすることができるという。一般的に積層ゴムの座屈荷重はハリングス理論によって求められる。しかし、この手法は線形で微少変形を仮定している。西村先生は積層ゴムの座屈現象を非線形性と大変形を考慮して解析するとともに、実験を行った。扁平な積層ゴムになると、水平変形にともなって座屈荷重が低下していくが、細長い積層ゴムでは水平変形が大きくなっても座屈荷重が低下しない(一定値をとる)ようにすることができることを発見した。

こうした知見をもとに、細長い積層ゴム(直径20cmで高さ30cm)を使った戸建て免震住宅を実用化したり、TMDに活用したりしている。このような細長い積層ゴムで座屈荷重を高めるには、ゴムのせん断弾性率と断面積を増やせばいいという。ただ、ゴム材料の変形限界や接着強度で積層ゴムの限界が決まってしまう場合には、理論通りにはいかない、とも。

いずれにしても、従来の既成概念を破る研究成果を披露いただいた。さらに船の揺れでTMDを動かして、そこから電気エネルギーを取り出すという研究もされており、建築の分野にとどまらない研究も興味深かった。

(文責:高山峯夫)