テーマ:耐力の構造設計からエネルギーの構造デザインへ 華麗でタフな構造デザインを目指して2015
講師:竹内徹(東京工業大学教授)
日時:平成27年11月11日
概要:

従来の構造設計は、耐震要素や崩壊形を意識して架構形態を決定していた。レベル1地震に対しては許容応力度設計を行い、レベル2地震に対しては崩壊または過大な変形になっていないことを確認することになる。

これに対し、地震エネルギー配分をベースとした構造設計では、地震エネルギーはダンパーに任せ、目標レベルまで主架構を弾性範囲にとどめるようにする。鉛直荷重のみを意識して架構形態を決定する。そして予備応答解析により大きな相対変形が生じる節点間または最初に塑性化する部材をダンパーに交換する。最後に、保有耐力計算、時刻歴応答解析などで安全性を確認する。

このようなエネルギー法に基づいて設計した事例を紹介された。最初に座屈拘束ブレースをトラス構造や鉄塔に使った事例、学校体育館の改修事例など。その後、建物の改修の際に、都市景観問題、防災・耐震問題、そして環境・エネルギー問題をファサードエンジニアリングとして統合するアプローチの例として、東工大緑が丘1号館のレトロフィットが紹介された。

エネルギー吸収部材を用いる構造デザインは、ビル架構のみならず立体トラス構造、ラチスシェル構造などの多くの空間構造に利用可能である。適切なエネルギー吸収部材の配置によって、部材座屈を回避でき、安定した架構の復元力特性を得ることができる。この考え方は、新築のみならず既存不適格建物や被災建物の改修にも有効である。

総入力エネルギーは安定した評価指標となりうるが、架構側の累積エネルギー吸収性能の評価が課題となる。架構のエネルギー吸収性能は架構内の塑性歪分布や最大歪振幅に大きく依存している。架構内のエネルギー配分に関するわかりやすい指標の整備が求められる。

エネルギー吸収部材を構造デザインに効率的に応用するために、現行設計基準に整合した、分かり易い設計法と解析ツールの整備が必要となる。

(文責:高山峯夫)

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