テーマ:普及型高層木造免震“モクビル”プロジェクトのご紹介
講師:中西 力(スターツCAM(株)執行役員、スターツ免制震構造研究所・所長)
日時:令和4年10月21日
概要:

コロナ禍の期間中、当研究会はオンラインで開催をしてきた。新型コロナ感染者数も少し落ち着いてきたことを踏まえ、対面での研究会を久しぶりに開催することにした。対面最初の研究会では、スターツCAMの設計・施工による「モクビル」(東京都江戸川区葛西)の見学と講演という構成とし、参加人数を制限して開催した。

当建物は9階建ての賃貸マンションで、地上5階はRC造、その上の4層が木造となっている。基礎免震構造が採用されており、高減衰積層ゴム4基で支持されている。最上層の1住戸はスターツが借りてモデルルームとなっており、参加者はそこで簡単な説明を聞いた。内部空間は通常の仕上げで特に木造を意識した造りにはなっていない。これは外観にも当てはまっていて、通常の木造建築であれば、いかにも木造ということを主張しがちなところをあえて抑えている。これは、できるだけコストを抑えるために、特別なことはしないという方針をとったためと聞いた。モクビルについては、「新建築」(2022年5月号)や「鉄鋼技術」(2022年9月号)が参考となる。

見学の後は場所を「ホテルエミオン東京ベイ」(スターツのグループホテル)に移して講演会を開催した。スターツでは賃貸マンションが約8割を占めていること、免震建物は601棟、木造建築も6000棟以上の実績があるという。

講演では「モクビル」の設計や施工のこと、上部4層だけを木造化した理由などについて解説してもらった。RC造+木造+免震ということで、建設費もCO2排出量(3割減)も抑えられていることも紹介された。「モクビル研究会」というもので、木造とRC造をどのように組み合わせることが効果的かについても検討している。

最後に高層木造建築が普及するためには、
(1)長期間使えるように維持管理の手法を確立すること
(2)事業継続ができ付加価値を生み出せるか
(3)RCや木造などを理解した構造設計者の育成
(4)災害に強い木造とするために振動制御を付加する
(5)経年変化も含めた性能検証を行っていくことが求められるという。

今回の講師には講演だけでなく、建物の見学や講演会場・懇親会や移動手段の手配などを行っていただいた。お礼申し上げます。

(文責:高山峯夫)