テーマ:ガスメータを用いたRCマンションのヘルスモニタリングに向けた研究
講師: 佐藤 大樹( 東京工業大学 准教授 )
日時:令和5年9月7日
概要:

佐藤先生は、免震構造・制振構造の地震や風応答が専門であるが、今回はガスメータを用いたヘルスモニタリングについて講演してもらった。佐藤先生は東北工業大学を卒業されているが、そのときの指導教員は川股重也先生とのこと。川股先生とは、日本建築学会で免震構造設指針の作成をするときにご一緒したことがあり、感慨深い。

東京工業大学には、20階建ての高層免震建物があり、そこでは加速度、変位、風速など103チャンネルの計測を常時行っている。高性能センサーを用いたヘルスモニタリングを行っており、佐藤先生が面倒をみている。しかし、こうしたセンサー類の導入には多額の費用がかかり、メンテナンスにも苦労がある。また膨大な計測データを管理することも大変で、来るか来ないか分からない地震への設備投資をしている。こうしたことがヘルスモニタリングが広がらない理由となっている。
ガスメータはガスを止めるだけの機能で十分なので、剛体球式センサーでON/OFFの情報しか得られないが、ガス会社がメンテナンスをしてくれる。最近ではMEMSセンサーに移行しているようだが、最大加速度だけしか記録しない仕様となっている。

まず最初に剛体球式センサーがどれくらいの加速度で作動するのかを振動台実験で調査した。正弦波加振だと、ガスメータの個体差や正弦波の周期によらず、170~180ガルで作動することがわかった。しかし、地震波を使った実験では、遮断する加速度のばらつきが大きくなる。剛体球式センサーではちょっと難しいか。

そこで、MEMSセンサーで最大加速度と最大速度の情報が得られると仮定してシミュレーションを行った。加速度と速度から等価な周期を算出し、周期の変化によって建物の応答を推定することができそうだ、ということがわかった。しかし、建物モデルの違いによる影響や適用範囲についてはさらなる検討が必要。

高級なセンサーではなく別の目的で設置されているセンサーを利用することで、簡易に大量のデータを集めることができる。大量に集まったデータを確率論的に評価することでヘルスモニタリングにつなげたい。しかし、こうしたセンサー群は同期がとれない、時刻歴がとれない、精度が低いといった課題があり、こうした課題が克服できれば、広域のヘルスモニタリングが実現できる。

(文責:高山峯夫)