テーマ:制振構造の性能設計に関する話題
講師:富澤徹弥(明治大学 准教授)
日時:令和6年9月13日
概要:我が国では、20世紀後半頃から建物の振動制御に関する研究開発が盛んになり、1995年兵庫県南部地震ではその振動制御効果が実証され、その後2000年には建築基準法改正による性能規定化が導入されている。
その急速な普及および性能規定化からも20~30年近くが経過し、現状の制振構造は付加制振など、法令手続き上の位置付けも多様化してきている。
各種構造計算法やJSCA性能設計などを題材とし、制振構造の性能設計に関する話題を提供していただいた。
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富澤先生は、東京工業大を卒業後、構造計画研究所に入社され共同住宅の3次元免震などの実用化にも携われました。2019年から明治大学に移られて、特定のテーマに絞ることなく幅広く研究に取り組まれています。
我が国では、20世紀後半頃から建物の振動制御に関する研究開発が盛んになり、1995年兵庫県南部地震ではその振動制御効果が実証され、その後2000年には建築基準法改正による性能規定化が導入されました。その急速な普及および性能規定化からも20~30年近くが経過し、現状の制振構造は付加制振など、法令手続き上の位置付けも多様化してきています。
しかし、構造建物以外に制振構造が普及していません。そこには、設計の自由度は高いものの、あいまいで分かりにくい点があると指摘。具体的には、
① 法律上の位置づけがあいまいで、どうすれば制振効果を得ることができるか
② 感覚として制振効果が見えにくい
③ 制振ダンパーが多様で、選択肢が幅広い
ことがあるといいます。
そこで、本講演では、制振構造の各種構造計算法による比較を紹介するとともに、制振構造の性能表示について解説をいただきました。
免震部材は大臣認定品となった一方、制振ダンパーは大臣認定ではなく設計者が自由に取り入れることができます。そういう意味では設計の自由度が高いと言えますが、それが設計の難しさを生んでいるのでしょうか。免震部材が大臣認定品となって25年が経過します。大臣認定品となったからといって免震建物が増えているという実感はありません。もっと性能設計が普及し、社会に建物の耐震性能を啓発していくことが免震・制振構造の普及につながるのかもしれません。
(文責:高山峯夫)