テーマ:熊本地震時の震源近傍記録の再現とその解釈
講師:永野正行(東京理科大学教授)
日時:令和2年2月21日
概要:

永野先生は2008年まで鹿島建設の小堀研におられ、その後は東京理科大に移られた。専門は地盤震動、相互作用、高層建物の設計。2011年東北地方太平洋沖地震のとき、大阪の咲洲庁舎の揺れが大きくて話題となったが、記録がとれていなかったら判断できなかった。記録をとることは大事だ。

2016年熊本地震では、地表に断層が現れた。益城町は震災の帯と呼べるものができたのかもしれない。1995年の兵庫県南部地震などでは断層に直交する成分に周期1秒ほどのパルス波が発生した。しかし、熊本地震では断層の平行方向にパルス波が発生している。西原村では、断層平行方向に周期3秒のパルス波が発生した。こうしたパルス波が発生した要因について断層モデルを構築して分析を進めている。

地震動を再現するために、波形インバージョン解析を行って特性化震源モデルをつくった。このモデルを薄層法を使って解析したところ、観測記録をほぼ再現できた。阿蘇の免震病院とK-NET一の宮での地震動の違いは地盤増幅特性の違いとされている。しかし、阿蘇の免震病院の深部地盤の特性を大きく変更しないいけないのは、これまでの知見とは異なっている。

今後、熊本地震で観測されたような地震動が発生するのか否か。それはわからない。建物の設計にどのように反映させれるのか、できるのかについてはさらなる研究が必要だろう。

(文責:高山峯夫)